tencho.omake of 写真とベルクのあいだで/写真家迫川尚子公式サイト





















1972年に、父・利也が詩集『明日の夢』を
自費出版しまして、父の詩ではなく、当時
小学校高学年だった私の幼い詩を、
それっぽく本にしてくれたのですが、
まあ親バカですね、ただ父の付けたタイトル、
それに弟・冬二の描いた表紙の絵は、今でも
気に入っています。父が書いた後記に、
「ホワイトプロダクション」のことが
出てきます。
「子供には子供の世界があって、
そこに私は入ってゆくことはできない。
しかし小学校三年の次男の冬二と
『ホワイトプロダクション』なるものを
つくってマン画作成に夢中になっている
二人を見ていると、私の少年時代を
思い出して、心当るものはあるのである」
と。
「この二児は一般社会で巧みに
泳いでゆくには人一倍の苦労を必要と
するだろう」
とも。あなたの子だからとツッコミを
いれるべきところでしょうが、父はその9年後に
亡くなっています。70年に今の場所で
純喫茶「ベルク」を始めましたから、まだ
店でレジとかうっていたのかも。そのうち
人にまかせっきりにして、自分は詩の
創作(&アルコールの摂取)に専念する
のですが。三男の愛染恭介は、『弟』という
詩によると、この頃三歳児でした。
「いつも/どこかを/ノコノコと歩いている
その足で/どこまでいくの。/あなたはどこから
やってきたの/心の中でソーッとたずねる。
しかし/その答は/だれもしらない。
だれもおしえてくれない/ただ なぞのままで
おわってしまう。」まあずいぶんかわいらしい。
ジュースの飲み方にもこだわりがあったようです。
「三日も/冷蔵庫に入れて冷きった/グレープジュースを
思いきって/いっぺんに飲む。/ヒリヒリしたものと
あまずっぱいものが/いっしょに残る。
一本しかないグレープを/じわじわと飲むやつは
本当の/あじわい方を/知らないやつだ。
そんなやつは飲んでいる時だけ/喜んでいる。
しかし本当は/のんでいる一瞬は/冷たいあじわいをし
飲んだあと/いいかおりをあじわう。/ああ。
まだすっぱいかおりが/残っている。」
こまっしゃくれ~。



井野


映像&音楽 by 井野朋也








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