private.2 of 写真とベルクのあいだで/写真家迫川尚子公式サイト

BIRTHDAY FLOWERS

10.8.30




花月のおやじさん(近所のお花屋さん)が
亡くなったようだ。迫川によれば、半開きの
シャッターにお通夜の案内が貼ってあった。
ふだん通らない道だが、ふと知人の店の
開店祝いにと思い、立ち寄ったのだ。花束と
いえば、自然とそこに足が向く。25年前の
5月30日、友人の誕生日会に招かれていた。
主役は友人の彼女だ。気のきいたものを
持って行きたいが、気がききすぎてもまずい。
そんな微妙なセレクト、私にできるはずもなく
飛び込んだのが花月だった。おやじさんは
すかさずありったけのカスミソウを束ねて
くれた。多分、いつものようにくわえ煙草で。
友人宅の呼び鈴を鳴らす。主役自らお出迎え。
はい、それが迫川尚子でした。以来、毎年
5月30日、私は迫川に花月の花束をプレゼント
している。ムービーでは迫川がインターフェロン
治療中だった06年から(一番撮りまくっている)
07年、08年、09年、10年の花束の写真をご紹介
します。04年、アーニー・ディフランコのライブ
開催の直前、私たちは急に花月に立ち寄り、迫川
は、客席からステージにいるアーニーにどうしても
花束が渡したいと駄々をこねた。長さ1メートル
くらいの豪華な花束をおやじさんは手早く束ねて
くれた。アーニーも驚いて受け取ってくれた。
こちらの気持ちを花束で表現してくれる花屋さん
なんて、もういそうでいないのではないか。



(井野)






半月後の今日(9月10日)、花月のシャッターが開きました。おかみさんによれば、中3の息子さんが後を継ぐと言ってくれているそうです。それまで自分が店を守る。ベルクと同じで、仕入れは生産者別(厳選)です。まずそれから覚えるとおっしゃっていました。




(井野)




写真 by 迫川尚子
音楽 by 井野朋也


Ani DiFranco