burosichi of 写真とベルクのあいだで/写真家迫川尚子公式サイト

ブロシチ蝶

10.10.12


小学校時代、同級生で、転校して以来音信不通だった蓑原茂くんが、ネットで私のことを探してくれて、ベルクに来てくれました。

蓑原と弟の冬二(ノラカバ作者)と私は、子供の頃、3人でよく高尾山に蝶をとりにいきました。

私自身、トンボや蝶は(カブト虫、クワガタも)よくつかまえました‥部屋をトンボでいっぱいにしたこともある。

蓑原はマニアと言っていいほど、蝶のことが好きで詳しかった。

しかしいくら蓑原でも、ブロシチ蝶は知るまい、中野ブロードウェイの7階にしか生息しない蝶を君は見たことがあるまい、とそれだけで私は(蝶における立場の)逆転をもくろみました。

子供ですから、蓑原も真剣にいるはずがないと反論する。

蓑原が転校するとき、そのブロシチ蝶を天才画伯井野冬二に作ってもらい、プレゼントしたのです。

まさかと思いましたが、今でもその標本、「宝物」として飾ってくれていたんですね。

この40年間、額がかけたり、ストーブの故障でススだらけになったりしたが、中身は無事だった、と。いや~感激しました。

先日、朝早く店にモーニングを食べに来てくれました。

レジ越しに、これまでの蓑原くんの40年間(大阪で暮らしたこと、蝶の本を出したことなど)がいっきに駆け抜けました。その間、客足がパタッと止まって(ベルクでは珍しく何分間も‥)。

ベルクのいきなはからいでした。



(井野)







写真 by 蓑原茂
音楽 by 井野朋也