street.36 of 写真とベルクのあいだで/写真家迫川尚子公式サイト

10月とタツロー

10.10.28




10月頭、
ベルク本編集の稲葉さん(達郎ファン)の強い強いすすめで、
中野サンプラザの山下達郎コンサートにいってきた。

前から3番目、真ん中の最高の席。すごい。

達郎は、いわゆる関係者席(業界人優待)
が嫌で、前の席は純粋にファン‥要するにいい席をとるため
努力した人‥でうまるという。努力してないのに。

そもそも達郎ほどのビッグネイムであれば、武道館にいっぺん
に人集めたほうが効率的。小さなホールを地道にまわり、
だから平日も日程に入れる、音や照明にこだわる(そういえば、
非常灯を消していた‥PAへ飛ばすのも、デジタル無線でなく
あえてアナログ配線)ところが、頑固職人というか‥まさに
ベルク的!と稲葉さんにおだてられて。

お客さんとケンカするところなどもベルク的?

ぼくらのいった日の達郎は、本人によれば「ごキゲン」で、
実際いつになく笑顔の多い、穏やかな達郎だったようだ。

確かに、今さら達郎?と思わないでもなかった。でも行けてよかっ
たです。

迫川も私も、実はどっぷり達郎世代。その日演奏されたナンバー
(かなりの数)のほぼ全曲全歌詞を復習しなくても覚えてた~と迫川
は自慢げ。

3時間半。長丁場というのは聞いてたが、ほんとたっぷりやって
くれて、日常のリズムから解き放たれた。

コンサートというのは、昔は新作レコードのプロモーション活動の意味
あいが強かったけど、今は新作がなかなか出せないし(遅れている)、
昔の歌も今の歌もカンケイなく好きなようにやって、純粋にコンサート
を楽しんでいると達郎さんはいってた。

ぼくらの世代では、達郎をきくのは「軟弱」なイメージが強くて(本人も、
よくヤジられてトラウマだー!と昔を振り返ってました)、みんなこっそ
りきいてた。

でも席についたとたん、ステージ上のローズが目に飛び込んで、頭の
中ではすでに「潮騒」のメロディーが鳴っていた。

実際そのローズで、「潮騒」を歌ってくれて。歌うのは10年ぶりとか
製造中止でローズがなかなか手に入らなかったのだ。

声帯も筋肉だから、プロといえども日々鍛えなければならない。そうい
う意味でも、地道なコンサート活動の成果が着実にあらわれているというか、
むしろ熟成した達郎が味わえたのは嬉しかった。

一言でいうと、味のあるオヤジになってた!!




(井野)








写真 by 迫川尚子
音楽 by 山下達郎