鈴木清のかっこよさ
この写真を見るたび、写真家の鈴木清さんのことを思い出します。鈴木さんは、私にとって特別な意味を持つ写真家です。『日計り』を誰に一番見せたかったか、というと鈴木さんなんですね。なので、この写真集の最初の頁に「鈴木清に捧ぐ」と書かせていただきました。
『日計り』を出版したのが10年前の04年。鈴木さんが急に亡くなったのはその4年前の00年でした。現代写真研究所の生徒だった私は、一度だけ鈴木さんの特別講義を受けています。そこで鈴木さんを知りました。写真も写真集もむちゃかっこよかった。衝撃的でした。写真でこんなことやっていいの?という解放感。
ベルクでは写真家に壁を無料でお貸しし、月替わりのオリジナルプリント展を開催しています。無名の方から有名な方まで、沢山の写真家に写真家に参加していただいています。鈴木さんは、ベルクの展示を毎回見にいらっしゃいました。そしてご自分の生徒さんや知り合いの写真家を何人も紹介して下さいました。私たちは鈴木さんを勝手に「ベルク写真部顧問」とお呼びしました。ただ、鈴木さんご本人がベルクで展示されたことは一度もありません。鈴木さんの設計する写真展は、空間を縦横無尽に使うぶっ飛んだものです。ベルクでぜひやりたかった。その機会が永遠に奪われたのが残念でなりません。
店には、私の写真もたまに飾らせていただいきます。鈴木さんにも見ていただいたことがあります。鈴木さんは、一度公開された写真にはコメントしないというポリシーをお持ちでしたが、そこをあえて何でもいいので、一言とお願いしたら、この写真の前に立ち、あなたが撮りたいものはここですね、と何もない右上の黒い部分を指されたのです。本当にその一言でした。でも、はぁー!ここかー!と我ながら感心しました。鈴木さんらしい、むちゃカッコいいコメントだと思います。
(2014.9)