ノーファインダー
これ、写真集『日計り』のトップの写真です。『日計り』の中で唯一、ノーファインダーの写真です。つまり、ファインダーを覗かないで撮った写真ですね。『日計り』だけでなく、今まで写真展やメディア等で公開した私の写真にノーファインダーの写真はこれ以外ありません。私としては珍しい写真です。ノーファインダーで撮ること自体が少ないので、たまたま選ばなかっただけですが。ノーファインダーを否定するつもりはありません。
私の撮る写真は主に町のスナップです。写真って撮るものですが、町は私が作ったものではありまそん。すでにそこにあるものです。むしろ撮らせていただいていると言ったほうがより正しい気がします。後から見ると、こんなものが写っていた!という発見がいっぱいあります。そこに、私は写真の醍醐味を感じます。撮るというより、写っている。ファインダーを覗こうが覗くまいが、シャッターを切れば何かが写ります。それが写真です。身も蓋もない話ですが(笑)。撮り方は自由だと思います。
ただ、私はカメラをしっかり構えて撮る派なんですね。理由はちょっと変ですが、礼儀ではないかと思うのです。撮らせていただくための。実際、見ず知らずの人を撮る時(人も町の一部です)、たいてい了承をとる余裕がないので、しっかりカメラを構え、ファインダーを覗きます。撮影をしているという合図になりますよね。で、軽く挨拶します。これで何も言われなければ、了承いただいたことにしています。
でもシャッターチャンスは不意に訪れます。ファインダーを覗こうとして間に合わないこともあります。これも、シャッターを切るのが先でした。動きがあって、自分では好きな写真です。写真集のトップに使ったのは、まず真っ黒な頁に白抜きの文字で「鈴木清に捧ぐ」とあって、その言葉の横にふさわしい写真はこれかな、と思ったのです。鈴木さんは、ノーファインダーの名手でした。
(2014.10)