写真に言葉は要らない?
私は写真家です。はい?何を撮っているか?そうですね。例えばこの写真は自転車です。見ればわかりますね。自転車が特にテーマという訳ではありません。この時はガード下にさっと光がさして、思わずカメラを向けました。そこに自転車があった。いえ、この説明は少し事実に反するな。私がカメラを向けた瞬間、光がさしたのです。よくあることです。でも、なるべくそういうことはお話しないようにしています。変な人って思われたくないので(笑)。写真展でも私はキャプションをつけません。写真の見方を限定してしまう気がして。余計な説明は要らないって。
でも最近、講演会や写真学校の授業で自分の写真について語る機会が増えまました。みなさん、意外に興味深く聞いて下さいます。私も調子にのって喋りまくるんですが、でも、撮った時のことなどを思い出しながらお話すると、その写真の背景が見えてくると言うか、写真の見方が広がることもあるんだなと最近は思うようになりました。
またある方に、私の写真は、人の写っていない写真でも、人の気配が感じられると言われたことがあります。確かに、この写真もそうですが、私が道ばたの自転車に反射的に目がいくのは、誰かが乗り捨てていったその気配にひかれるのかもしれません。人の言葉によって、自分の写真を再発見するということもあるんですね。
(2014.7)