1972年に、父・利也は詩集をひとつ自費出版しています。父の詩ではなく、当時小学校高学年だった私の幼い詩を、それっぽく本にしてくれたのですが、まあ親バカですね。ただ「明日の夢」という父の付けてくれたタイトル、それに弟・冬二の描いてくれた表紙の絵は今でも気に入っています。
父の書いた後記に、「ホワイトプロダクション」のことが出てきます。
「子供には子供の世界があって、そこに私は入ってゆくことはできない。しかし小学校三年の次男の冬二と『ホワイトプロダクション』なるものをつくってマン画作成に夢中になっている二人を見ていると、私の少年時代を思い出して、心当るものはあるのである」
「この二児は一般社会で巧みに泳いでゆくには人一倍の苦労を必要とするだろう」
72年といえば、その2年前に父は今の場所で純喫茶「ベルク」を始めています。きっと、店でレジをうったりしていた時期でしょう。そして9年後に他界しています。その間、ほとんど店は人にまかせっきり、自分は詩の創作(&アルコールの摂取)に専念していました。
「ホワイトプロダクション」には、やがて三男の恭介も必然的に(強制的に)加入します。
60年代から70年代の時代背景を考えれば当然ですが、私たち3兄弟は漫画家とロックミュージシャンに憧れていました。しかも手塚治虫の虫プロやビートルズといった「共同作業」に。
それがまさか父の店を継ぐかたちで90年以降のベルク(飲食店)につながるとは思ってもいませんでした。
母がこんなものを大事にとっておいてくれました。
井野
映像&音楽 by 井野朋也