photo by Naoko Sakokawa
music by Tomoya Ino

ここ10年くらい、ライターの木村衣有子さんをはじめ、多数のお客様から耳打ちされるように京都の名喫茶店、六曜社のマスター奥野修さんのことをうかがっていました。マスターはその方たちに呪文のように「東京へ行くなら、ベルクへ行け」と囁かれていたのです。マスター自身、ベルクには何度か来ていただいたようです。しかし、私は今まで一回もお目にかかれずにいました。三条の駅をおり、三条大橋を渡り、メインストリートに面した六曜社の階段を降りて(マスターが直々いれるコーヒーをいただけるのは、一階でなく地下のほう)、マスターのお顔を拝見できたときは抱きつきたかったほどです。情けないことに3、4日前から肋骨を激しく痛め、喘息の発作も10年ぶりに軽めにですが出ていましたので、動きはひどく控え目にならざるを得ませんでしたが、心の中では小躍りしていました。すぐベルクとは名のれませんでしたが。シャイなもんで。いや、それよりまず珈琲をゆっくり味わいたかった。正解でした。心がやすまるほど美味でした。いやらしい言い方をすれば、東京なら千円以上とれる。400円台はバカ安。カウンターがちょうどうまいぐあいに手がのせられる造りになってて、くつろげました。何気によりかかれるものがあるって、街やパブには重要なことですね。マスターとは、二言、三言交わしました。もっとお話したかったですが、にんまりしていただけただけで充分。いやいや、もちろんそれだけじゃありません。ベルクといえば、立ち退き問題。マスターは心配そうに「大丈夫ですか?」と聞いて下さいました。「お陰様で、なんとか。いつどう風向きが変わるかわかりませんが…ゴホゴホ」(それは私の病状か)とお答えしたら、深く頷かれてました。帰り際、「宣伝しますよー!」とマスターの明るい声。また来ます!
その後、2時間ほど雨の祇園を散歩しました。電車で神戸→有馬温泉へ。2月の全館休業日=私たちの一泊旅行は、家主がルミネになって以来(この6年間、大晦日しか休みがなかった)、初のこと。ビルも人も少しは休まなければいけません。
湿布と薬は手放せなかったものの、六曜社、酒、温泉という3つの目的は果たせました。御所坊、いい宿でした。

2012.2.14 井野


夢のマッチ共演
年に一日、東京を出る












六曜社、
酒、
温泉。