キャリとインターフェロン

9.5.11






インターフェロン治療中、
副作用で私は半年間、
ほとんど家から出られず
金魚のキャリ
眺めて暮らしました。
キャリも調子をくずし、
私のブレンドした薬で
一緒に療養することも。
店長の珍しい書斎兼仕事部屋の
シーンもあります。








迫川














半年間、インフルエンザに
かかったような症状でしたね。
当時、最新の
リバビリンとインターフェロンの
併用療法というやつでした。
インターフェロンは週に一度の
注射です。
毎週土曜日に病院に通って。
その日から高熱が出て、
数日間は寝たきりになって、
金曜日あたりになって
やっと少し副作用が薄れて、
おもてを出歩けるという
その繰り返しでしたね。
週に一日だけ、ベルクに行って
ちょっとお散歩する訳です。
コニカミノルタプラザでやった
「ETWAS」展は、その
貴重な1日に撮った写真を
メインにしています。
ただ、家の中でも
テレビや
飼ってる金魚や
身近なものたち、
自分の顔とか
注射の跡
つめ
薬も
撮っていました。
この錠剤が、
リバビリンです。
こいつの副作用がまた
すさまじかったようで。
一日2回服用していましたが、
毎回儀式のようでしたね。
私は隣でご飯食べたり
酒をのむしか
なかったです。








井野












映像 by 迫川尚子
音楽 by 井野朋也






キャリとチャキン
















































中野北口編

9.5.15








































私のDVDコレクション'06.11







迫川尚子は、
インターフェロン治療中、
副作用による高熱と貧血で
外出できず、家の中でひたすら
映画DVDをリハビリを兼ねて
写真に撮っていた。
大好きなコスタ、
ソクーロフ、
吉田喜重、
オリヴェイラ、
ペキンパー、
ヴェンダースを。


ちなみに、迫川が今、
最も注目する映画、
ペドロ・コスタ(ポルトガル)の
『ヴァンダの部屋』と
ジャ・ジャンクー(中国)の
『長江哀歌』は、
偶然とは言え、どちらも
デジタル映像でどちらも
テーマが「立ち退き」…








(井野)











































映画を写真に

9.1.7







半身浴はやり方を間違えると逆効果です。やり方と言っても、そう難しいことではありません。
①温度を守ること。
②お湯の量を守ること。
③手はお湯の外に出すこと。
④最低15分。長いにこしたことはない。
⑤毎日入ること。
そのくらいです。
①温度を守ること。意外と守られないようです。ぬるめというアバウトなとらえ方ではダメです。慣れないうちはその人の感覚や状態で、同じ「ぬるめ」でも温度が変わります。半身浴にもレシピがあります。料理に通じますね。半身浴の温度は38度から40度までのあいだです。夏は38度、冬は40度でもいい。また長めに入るなら38度、短く入るなら40度でもいい。いずれにしても、温度は守ってください。温度計は必要です。その温度でつかれば、こんなにぬるいの?と思うかもしれないし、意外とあったかいと思うかもしれません。
熱いお風呂が好きという人もいるでしょうが、半身浴はお風呂じゃなく、一種の治療だと思って下さい。温度が高いと、表面の皮膚だけあたたまり、中はかえって冷えます。お風呂に入ったという満足度はあるでしょうけれど。若くて元気なうちはいいですが、お年寄りや病人は命とりになりかねません。半身浴は身体の芯まであたためるのが目的です。それには体温より3度くらい上の温度でじっくり煮込む…じゃない、温める以外にありません。
②お湯の量を守ること。腰のあたりまでつかります。量といったのは、そのときの水圧をイメージしてほしいのです。それが身体中にちょうどよく血がいきわたる量、つまり水圧なんです。首までつかると水圧が強すぎて血が心臓に集中してしまいます。かなりの負担です。それも高齢者には危険です。年をとると、交通事故よりもお風呂場で死ぬ確率が高まります。それは熱いお湯で首までつかるという若い頃からの習慣が変えられないからです。若ければ、それで気分がリフレッシュするかもしれませんが、年をとると身体が追いつかなくなります。年をとったら、お風呂場は治療場と割り切ったほうがいい。
③手はお湯の外に出すこと。東洋医学では、バンザイしたかっこうが人間の基本形だそうです。だから手が一番てっぺんです。半身浴では下半身(腰より下)だけお湯につかります。腕も手も頭より上にあるものなのでつかりません。逆に膝とかはつからなければダメです。お湯の中で腰かけるしかないですね。お湯(水)に沈む椅子は必要です。東急ハンズなどに売っています。水中温度計も。
④最低15分。長いにこしたことはない。たらたら流れる汗でなく、腕に玉のように浮き上がる汗が、身体の芯まで温まっている証拠だそうです。それには本当は最低1時間とか2時間つからないとダメでしょう。そんなに長い時間?と思われるでしょうが、お風呂場をリビングのようにくつろげる環境にしちゃえばいいんです。本を読んだり、テレビを見たり、音楽を聴いたり。わたしは防水テレビと防水CDプレイヤーを買いました。毎日、テレビで映画DVDを見ています。この5年間で、何百本もの名画を見ました。
⑤毎日入ること。どんなに長時間つかっても、それが3日坊主で終わったら意味がありません。半身浴でめざすは体質改善です。気長に毎日入ること。億劫になるくらいだったら、15分でも20分でもいいのです。やらないよりは。
それに毎日半身浴すると決めると、日常で引きずっていたものをいったん断ち切ることになります。誰かのなにげない一言、うちかけたメール、やり残した仕事、そういったものが半身浴でいったん断ち切られるのです。あのぬくぬくしたお湯の中で映画はどこへでも連れていってくれます。それは精神衛生上もとてもいいことだと気づきました。
DVDで見るのは、映画の見方としては邪道かもしれません。作家はあの大きなスクリーンに映しだされることを想定して映画を作るのですから。それは心しているつもりです。ただ、映画館はスクリーンの大きさだけでなく、非日常な空間であることが重要です。照明を消して半身浴しながら映画を見るお風呂場は、まさに非日常空間、ささやかな映画館です。ちょっとこじつけっぽいかな?
色々な映画を見ていますが、意外だったのは、例えば小津安二郎監督の作品が好きになったこと。小津さんは、人間の日常を描いた映画監督といわれます。非日常空間で日常を描いた映画を見る。うーん。そう考えると頭がクルクルしますが(パー?)、考えなくても小津映画でトリップするのはなぜだろう。あの四角いスクリーンに小津さんは日常を単に四角く切り取るのでなく、再構成していますが、そのしかたが徹底的に計算されていて、わたしの撮るスナップ写真とは対極にあるような映像です。スナップは構図におさまりすぎてもつまらないし、偶然に身をまかせますから。でも小津映画は計算されていますが、少しも冷たさを感じさせない。画面の隅々まで神経がはりめぐらされています。なんだろう。愛?カメラのレンズも50ミリを使っているので端正な物撮りに近い。でも、ややローアングル。うーん面白い。わたしは35ミリあたりのやや広角のレンズを愛用しています。画像は少し歪みますけれど、それゆえ雰囲気が出やすい。スナップには向いています。ただ、小津さんは街も人も端正な50ミリ。でも、ややローアングル。うーん刺激的。最近、小津さんの影響でわたしももっぱら50ミリです。
脱線してすみません。でもわたしは半身浴で毎日このようにトリップしています。それもいいのかもしれないですね。


半身浴の効用には三つのポイントがあります。全部つながっていることですが、
一、下半身を温める
二、血がバランスよくまわる
三、毒素が出やすくなる
 じつは下半身を温めるというのでは、説明不足です。もう少し厳密にいうなら、下半身より上半身がさめる。それがポイントです。下半身より上半身を温めるのが現代文明。だってみんな寒いと上ばかり着こみますもんね。いわゆるのぼせた状態です。それが万病の元なんです。むしろ上は半そで1枚でも大丈夫なくらいに下を着こむのが理想です。夏もそうです。熱射病になったら上半身をさますと同時に下半身を温めると楽になります。
 血のポンプである心臓は上半身にあります。その上半身が下半身より温まると、下半身の血行は悪くなるばかりです。毒素や老廃物は下のほうにたまります。それが排出しにくくなるのです。







(迫川)














写真 by 迫川尚子
音楽 by 井野朋也 "Ready Action"



































中野南口編

9.3.26








撮影by
迫川尚子
































記念撮影

2006.9
10.5.13



ザ・ラスト・インターフェロン・デイズ






井野「注射とか錠剤と記念撮影をする人も珍しいよ」
迫川「半年間、お世話になったから。情もうつるって」
井野「半年間、あんなひどい副作用に悩まされたのに?」
迫川「だからこそ。看護婦さんに最後に写真とっていいですか?ってお願いして」
井野「週に1回、バスで通院してた。車内で撮った写真が結構あるよね」
迫川「なんでエプロンして母校の門の前でこんなバカなかっこうしてるの?」
井野「あ、この写真?忘れ物を取りに家に戻っただけじゃない?」
迫川「店から?エプロンとるの忘れてるよ?なんで?」
井野「たまたまだよ。それで母校がたまたま家の近くにあっただけだよ」
迫川「桃丘小学校(現在、廃校)。せっかくの記念撮影なのに」
井野「昔、お世話になったから。それを態度で表しました」











写真 by 迫川尚子
音楽 by 井野朋也


































インターフェロン・デイズ・ポスター

9.1.18









C型ウィルス性肝炎と診断され、06年の3月から9月までの半年間、インターフェロン治療を受けました。
いったん病名をつけられると、堂々と酒が飲めなくなる。
困りました。
医者の「まだ若いから(治療を受ける体力がある)」の一言で決断。
仕事を全て中断し、ひたすら寝て、食事に気を使いました。
私は、病気と闘ったのではありません。
ウィルスをゼロにし、医者から酒OKのお墨付きをもらうために、きつい副作用にも耐えたのです。
(半年間、家でTVばかり撮っていました。)





(迫川)












デザイン by Tomoya Ino